日芸の演劇学科演技コース、2017年度一般一期の試験では古典作品のセリフ表現とエチュードが出題されました。
古典は内容が難しく、エチュードで何を伝えればいいのかがわかりにくいです。
このような古典を使った試験のポイントは【五感を使って目の前の情景をイメージすること】です。
五感とは「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の五つの感覚の事です。
セリフやエチュードの中で何か変化が起きた時、五感を使って作品を読み解く事で
・今いる場所、見ている景色
・手元に何があるのか
・役はどんな性格なのか
・なぜこの動きをしているのか
が理解しやすくなります
このように五感から人数や場所、状況、役の目的などを細かくイメージしながら世界観を立ち上げてみましょう。
そうすることで動きや感情に迷いがなくなり、スムーズに演技することができます!
試験内容
①渡されたセリフを朗読する
②セリフの内容をエチュードで表現する
※W.シェイクスピア作「ヘンリー五世」
白水舎P.10〜P.12より抜粋
《説明役》
おお、創造の輝かしい天頂にまで炎を噴きあげる詩神ミューズよ、なにとぞ力を貸したまえ、
舞台には一王国を、演ずる役者には王侯貴族を、この壮大な芝居の観客には帝王たちを与えたまえ!
そうすれば武名高きヘンリーも、王にふさわしく、軍神マルスの姿をとって登場し、
その足もとには飢餓と険と火が、靴紐につながれた猟犬のように控えたでありましょう。
だが、皆様、どうかお許しを、われら愚鈍凡庸な役者たちが、この見すぼらしい舞台で、
かくも偉大な主題をめぐる芝居をあえて演じますことを。
この闘鶏場のごとき小屋に、はたしてフランスの大戦場を
収めうるでしょうか?このO字型の木造小屋にかのアジンコートの空をふるえおののかせた
おびただしい書を詰め込みうるでしょうか?
ああ、どうかお許しを!このOの字は数字で言えばゼロですが、
末尾につけば百万をあらわすことができます、
そして百万にたいしてゼロのごときわれらは、
ひとえに皆様の想像力におすがりするほかありません。
どうかご想像願います、いまこの小屋のなかに
イギリス、フランスの二大強国が閉じこめられ、
それぞれの突き出たそそり立つ前線は危険な海峡によって引き裂かれていると。
われらのたらざるところを、皆様の想像力でもってどうか補ってください、
一人の役者は千人をあらわし、そこに無数の大軍がいるものと思い描いてください。
われらが馬と言うときは、誇らしげな蹄を大地に印する
馬どもの姿を目にしているものとお考えください。